いい人だから売れるのか 売れるからいい人になるのか
この間、あるファッション関係の対談取材を終えたあとに、お夕飯をご一緒させていただいたいのですが、その場でこんな話が出ました。
「本当に売れている人は、お客様のためだと思ったら、他のスタッフを推薦したり、他の店を推薦したりする」
確かに、売れている人ほど、自分を売り込むのではなく「後輩の●●をぜひ、よろしくお願いします」って言ったりするし、「●●サロンの●●さんのクリエイティブを尊敬している」と言ったりされるなあって思う。
とくに美容師さんに関して言うと、売り上げがすごかったり、全国を飛び回って講習したり、雑誌に出まくっているような売れっ子さんは、ほとんどの方が素晴らしい人格者です。
そもそも人格者じゃないと、結局サロンワークでお客様に支持されていないわけで、売り上げもあがっていないわけで。
とくに対面接客の美容師さんの場合、「いい人じゃないと売れない」という側面はやっぱりあると思います。
ただ、一方で、売り上げがあがったり、売れっ子になったりするからこそ、いい人になる、ともいえます。
それにはこんな理由があって
1)まず、生活に困らなくなると、ホントに「お客様のため」や「デザインのため」にピュアになれる
2)自分のステージがあがって、それまで会えなかった上の人たちと会うようになると、「自分ってまだまだだ」と謙虚になれる
3)自分のファンが増えると、その人達を絶対に裏切りたくないと思って、より切磋琢磨するようになる
という、好循環のスパイラルに入るような気がするんですよね。
昔、本当に才能があるし、素晴らしいクリエイティブをされる若手の美容師さんの先輩に
「あの子、ダントツでいい作品を作るので雑誌の編集さんには評判いいんですが、本当にわがままで、スタッフにも信頼されないし、お客様もなかなかつかないんです」
と、相談されたことあります。
で、そのとき私がその先輩にアドバイスしたのが
「だったら、なおさら、いろんな雑誌の撮影に出まくらせるといいですよ」ってこと。
なぜなら、雑誌の撮影に出まくったら、
1)同じスタジオで巨匠の作品づくりを目の当たりにするはずだから絶対に謙虚になるし、
2)撮影で成果を出さなきゃいけないと思ったらアシスタントさんやモデルかかりさんに好かれないとやってけないし
3)雑誌に掲載された写真を見て指名してくださったお客様には、本当に心から感謝するはずだから、お客様にも支持されるようになるはずって。
その後、雑誌に出まくり続けたその方は、売り上げもあがり、スタッフさんからの信頼も高くなり、いまではサロンになくてはならない存在になっています。
いい人だから売れるもあるけど
売れるから、いい人になるというのもあるなあ、と。
そんなことを考えました。
先日インタビューさせていただいた画家の方が
「絵を描いて食っていこうと思うからダメなんだよ。お腹いっぱい食ってから絵を描かないと」
と、おっしゃっていたのも、これにつながるところ、ある気がします。