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父の学級通信より 「ヤッター! ガッツポーズ」

父の学級通信より。

 

4月10日(水)の体育の授業のこと。

 

私は先程からその様子を想いうかべ、ひとりいい気持ちになっている。机にむかいながらナイターの野球をラジオで聞いているのだけれど、どうも思考が一定しないのである。それはラジオの音より、今日あった体育の時間でのA君の行動が頭の中をかけめぐっているのである。

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今日の体育は跳び箱だった。全学級の子ども達が屋内の体育館へ集合。どれくらいとべるのかをみたいと思い、記録したのです。

 

全員4段にちょうせん!

 

そうそう、一年の最後の方で何時間もかけ、個人の特訓をしたのです。いきおい私の目はその子達に集中します。ちょうどその時は9人程、4段をとべない子がいたのですが、最終的には1人になりました。

 

二年生になって最初の体育、そしてとび箱。それも一年生全員が見ている前での試技。子どもにとってはなかなか大変なことなのです。特にとべるかどうか不安な子にとっては……。

 

 

さて、A君の番になりました。その前からちらちらと彼を見ていました。彼は肩で大きく深呼吸をしました。彼との長い付き合いで(1年間ですが)、彼が緊張している時のポーズがこの姿であることがわかっていただけに、私は彼の跳躍に期待していました。

 

緊張の中での跳躍……。これだけでも彼にとっては大変価値のあることなのです。彼の心の中が痛い程わかるのです。

 

"確かに4段をとんだことはあるのだけれども、それは1年生のことで、あの時は最後に勇気を出してとんだからとべたけれども、今日はとべるだろうか……"と。

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きっと心の中でたたかっていたのだろうと思うのです。そのことは彼がとぶ少し前に見せた動作でわかったのです。彼は自分に言い聞かせるように一度うなずいたのです。そしてスタートしたのです。

 

彼の身体はフワッと浮き、見事とび箱をこしたのです。"オー、やったなあー"と私が彼の顔を見ると同時に、彼は右手をあげ、右の手のひらをにぎりしめガッツポーズをしたのです。

 

私はその彼の姿に本当にびっくりしたのです。

 

一年間がすぎ、こんな彼の動的な姿を私ははじめて見たのです。おとなしく、自分の道をまっすぐすすんでいく子ですので、この姿が今でもはっきり目にうかんできます。私もガッツポーズしたい程でした。

 

他の2人の先生もその姿を見て、"いや変わったね、すごい成長だね"と喜んでくれました。これだから教師はやめられないとつくづく先程から感じているのです。

 

さて今度は5段です。5段は小学校で初めての経験なのです。子どもにとってはかなり高い高さなのです。彼はその未知の高さにちょうせんしようとしているのです。

 

先の子どもが何人か成功しました。彼の目はとてもうらやましそうに見ているのです。私の方は少しばかり心配になってきました。今日は4段のガッツポーズだけで良かったのでは……と感じ、"少し欲ばりすぎたかなー” と心配していました。

 

彼の番になりました。彼は勢いよくとびました。

 

とべた!

 

私も思わず大きな声で"やった!"とさけんでしまいました。彼はうれしそうにして皆のところへとんでいきました。

 

このあと「明日、6段やるけれど、とべると思う人?」と聞いたら、彼は当然のように手を挙げたのです。「自信というのはおそろしい」とつくづく思ったものです。

 

 

4月11日(どろんこ310号/小学校2年生担任時)

 

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