その道(撮影)のプロ美容師さんと一番差がつきにくいヘアデザイン
SAYURIさんの言葉にインスパイアされてつらつら考えた昨日の、その道のプロと一番差がつかないフォトシュート の続きです。
今日は日常的に雑誌の撮影の機会が多い(例えば表参道近辺の)美容師さんたちのヘアスタイル写真と、
これからフォトをはじめる人たちや、フォトを始めたばかりだけどまだどうしていいかわからないというサロンさんのヘアスタイル写真、
一番違いが出やすいのは、どこかというと…… という目線で考えました。
(いつもながら、クリエイティブフォトの話は、今回のぞきます。いわゆるサロンフォトに関しての考察です)
ファッション誌で活躍している美容師さんのヘアスタイル写真は、美容師さん的技術に加えて、ヘアメイクさん的技術の域の仕事が求められているケースがほとんどです。つまり常日頃から「見せるフォト」「フォトジェニックなヘアスタイル」という思考を鍛えられているんです。
ただ、サロンワークを再現すればいいだけではなく、そこに+アルファの華を持たせること。そのテクニックが、雑誌で活躍する美容師さんたちには求められています。
だから、雑誌をよくやっていらっしゃる美容師さんは、アイロンワークも上手だし、スタイリング剤にも詳しいし、そのスタイリング剤が写真に撮ったときにどんな質感に映るかということにも詳しいし、スタジオのライティングの組み方を見て、どれくらい髪を動かすか、どれくらい質感をおさえるかというようなことにも詳しい。
カメラマンさんによってウェーブの強さや浮遊感を変えるくらいのことは、日常茶飯事にやっているし、なんなら、隣に並ぶ美容師さんのヘアをみながら、自分のヘアを変えたりする方もよくいらっしゃいます。それくらい、シビアな世界です、雑誌のヘアページは。
なので、撮影をしはじめたばかりのサロンさんが、普段あまり使わないアイロンを使い、撮影用にゼロベースから髪を巻き、使ったことのないスタイリング剤をつけて……という領域で勝負すると、やはり、最初は差がはっきり見えやすいなあと感じます。
(もう、何度も言われてうんざりしているんだけど、誤解されやすいのでもう一度書きますが、私は撮影においてのアイロンワークは「全く」否定してません)
逆にじゃあ、どういう領域だと、差が出にくいかというと、
リアルサロンワークが、一番差が出にくいんじゃないかと思います。
これは、mina別冊の全国47都道府県ヘアカタログで私自身も感じたし、ページを見たほとんどの方に言われたこと。
もちろん撮影に慣れている方もたくさんいらっしゃいましたが、それと同じくらい、美容師さんもモデルさんも、撮影に慣れていない方、初めての方がたくさんいらっしゃいました。
でも、それにも関わらず、とても可愛いページになりました。実際に、読者(お客さま)からも、可愛いとの声をいただきました。
これは、全部リアルサロンワークをまんま撮影したことも影響しているかなと思います。撮影慣れしている東京のサロンさんが得意とする、ヘアメイク要素をできるだけ排除してみました。
全体の6割がリアルパーマ、洗いざらしのヘアも多かったし、切りっぱなしのヘアも多かった。撮影現場にはアイロン持ち込み禁止にさせていただきました(本当は持ち込んでもらってもよかったんだけど、ゼロベースからアイロンで巻くような仕事を避けるために)。
(また、本当は、リアルパーマでも、洗いざらしでも、切りっぱなしでも、細かいフィニッシュワークの差は写真にしっかり出るんだけれど、でも、ゼロベースからアイロンで全部巻くときの差ほどは出ないです)
撮影用の髪を作ることにおいては、雑誌でひっぱりだこの美容師さんは、365日のうち、半分以上の日にちを撮影に費やされたりしています。月に1度だけ撮影する人が「撮影用の髪」で追いつこうと思ったら、相当なレッスンをつまなきゃいけないかもしれない。
でも、それが、サロンワークのパーマスタイルだったら? ヘアカラーだったら?
雑誌で活躍する美容師さんも、撮影に慣れていない美容師さんも、365日中、250〜300日はサロンワークされているんじゃないでしょうか(人数の多少はあるかもしれませんが)。
もちろん、雑誌で毎月のように取り上げられる美容師さんたちは、美容師さんとしてのサロンワーク技術も一流ですし、素晴らしいのですが、
ほとんどやったことがないヘアメイク領域の仕事で勝負するよりは、毎日やっているサロンワーク領域で勝負するほうが、お客さま目線で見ると、写真にその差は出にくい、と感じます。
先月出版させていただいたヘアカタログも、実は参加サロンさんを、35サロンさんほど、Facebookで募集させていただきました。
雑誌の撮影は初めてですという方もたくさんお見えになりましたし、デビューしたばかりのスタイリストさんもお見えになりましたが、全く普段の撮影とかわらず、20分おきにさくさく撮影が進み、時間が押すことも全くなく、スムーズに進行しました。
応募してくださったサロンさんの写真が1ページ大になったページもたくさんあります。
もちろん、普段から撮影に慣れていらっしゃるサロンさんの作品はやはりすごくクオリティが高かったですし、さすが! と思わされたスタイルがたくさんありましたが、
同じくらい、初めて撮影をされた方の作品も、とても素敵なヘアが多かったです。
これもやはり、ヘアメイク要素よりも、サロンワーク的要素が強い40代、50代のスタイルだったということと、もうひとつは、作り込みをしにくい外ロケだったからでしょう。
私がもし、今から撮影に取り組むサロンだとしたら、
「見せる用の写真」は、それはそれでレッスンを重ねるとして
取り急ぎは、自分たちの強みを生かした撮影をするだろうなあと思います。雑誌にたくさん出るサロンさんには、その強みがあるし、地域密着型サロンさんには、地域密着型サロンさんならではの強みがあるように思います。
例えば、サロンワークに近いもの、施術をしたもの、プロセスを見せるもの、年配の方の写真、ロケでの撮影、モデルさんのパーソナリティに寄せた写真、などなどです。
ヘアメイク的撮影をしないほうがいいという意味ではありません。その領域で、雑誌に出まくっているサロンさんと勝負しようとすると、雑誌に出まくっているサロンさんが撮っただけの撮影回数を重ねる時間が必要だなあと思います。
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