35歳を超えたとき、捨てるべきもの、残すべきもの
突然ですが、私は40歳前後くらいのタイミングで、がくっときました。なにが、がくっときたかというと、体力とか気力とか、そういうものです。疲れがとれにくくなったし、集中して原稿を書ける時間が短くなってきたし、寝ないとてきめんに体にくるようになったし、30代のときのペースではとてもじゃないけれど働けない。
でも、私は書籍ライターとしてのデビューが38歳になってから、と、めちゃくちゃ遅いので、人一番働かないと、ひとかどの仕事はできないんじゃないかって、そんな焦りもあって。
私はものすごく楽観的な人間だし、自分の将来に1ミリの不安も抱いたことがなかったのだけれど、突然いろんなことが一気に心もとなくなってきました。それまで毎年1つずつ歳をとるのが楽しくてしかたなかったのに、誕生日が憂鬱になってきたのもこの頃。
このままで、私、70歳までライター続けていけるだろうか。そんなことを考えました。
そんな、言いようのない焦りを感じていたとき。今から1年半前のことですが、イラストレーターの松尾たいこさんと、さとなおさん(佐藤尚之さん)のトークイベントに出かけ、「遅咲きでも全然いい」「むしろ遅咲きだからいい」「無理をしないのがいい」「無理をしないからいい」といった、なんかちょっと涙ぐんじゃうようなメッセージをもらいました。
↑これがそのときの写真。2016年の2月。ちょうど私が40歳の誕生日を迎える数日前のことでした。
松尾たいこさんは、いまとなっては日本を代表するイラストレーターさんですが、広島でOLをしたあと、32歳でイラストの勉強をしたいと思って上京。デビューは35歳という、文字通り遅咲きのイラストレーターさんです。
ちいさいときから体が弱く、持病持ちで(なんと、その持病が一緒だったのも、私がすごく心強く感じたひとつの理由です)、何をやってもすぐ疲れてしまうので、大好きなイラストの仕事を一生続けていくために、いろんな工夫をされているとのことで、「あああああああ!!! もう、私がいま、知りたかったことがここにある!!!!」と叫びたかったくらいの時間でした。
そんな松尾さんの人生の工夫や、考え方の真髄が1冊にまとまっているのが、この「35歳からわたしが輝くために捨てるもの」(かんき出版)です。
松尾さんは、ずっと憧れの存在で、個展にいっては遠くからそっと眺めているだけで声もかけられなかったのですが、このさとなおさんのトークイベントでお目にかかれたり、松尾さんが「女の運命は髪で変わる」を読んでくださったりがきっかけで、この書籍の編集協力をさせていただくことになりました。
↑ご縁をくださったさとなおさん、ありがとうございます。
取材中は、もうとにかく楽しかったです。
30代よりも40代、40代よりも50代、どうすればより楽しい人生にしていけるのか。
そのためには、何を捨て、何を残していけばいいのか。
正直いって、この本の制作中に私自身が松尾さんから受けた影響ははかりしません。というか、松尾さんに出会えていなかったら、私の40代は悲惨になっていたかもしれない。
松尾さんが「捨てるべき」と教えてくれたもの、この1年間で、私もひとつずつ手ばなしていきました。
例えば
・長年抱えていたコンプレックス
・人見知りであるという自分へのレッテル
・たくさんの服、たくさんの本
・心をざわっとさせる存在
・過剰な情報収集
・都会での不規則な生活
・無理をして受けるスケジュールのきつい仕事
・・・・などなどなどなど。
一方で、
・年齢や肩書きで人を判断しないこと
・プロのいうことを素直に聞くこと
などは、歳をとってもずっと持ち続けたい「残すべき」こと。
松尾さんのお話は、とても明快ですっきりしていて、伺っていても本当に気持ちがよかったです。
この本を作っている過程で、私が受けた一番大きな影響は、「仕事をする環境」「自分が生きていく環境」に対して、捨てるもの、残すものを決めることができたことです。
私は今年の夏、表参道の賃貸マンションを引き払って引越しをしました。いまは、多摩川の川沿いに住んでいます。北海道から泊まりにきた母親が「北海道よりも虫の声がうるさい」というくらい自然豊かな場所で、三食自炊して、夜は早く寝て、日中に原稿を書くといった、まっとうな生活を始めました。
自分でも驚くほど、心も体も安定して、それまでずっと飲み続けていた、いろんな薬がいらなくなったほどです。(花粉だけはひどくなりましたw)
30代までは無理やり走らせていた自分の体が、実は結構疲れていたことに気付けたのも、松尾さんのおかげです。
↑打ち上げにて 松尾さんとマネージャーの大西さん、編集の谷内さんと。松尾さん、いつもおしゃれで素敵なんです!
歳をとることに漠然とした不安を抱いていたり、なんだかこれからの人生はずっと下り坂なんじゃないかとうすら暗い気持ちになっている女性に、ぜひ読んでもらいたい本です。
私の心と体が救われたように、まだまだこれから、というか、これからこそ楽しい人生が待っている! と思う1冊だと思います。
私は本当に、本当に、出会えてよかったです。
そして、このときのお仕事がきっかけで、松尾さんに表紙をいただいたのが、「道を継ぐ」です。先日、3刷になりました。これも松尾さんの素敵な表紙のおかげです。ありがとうございます。