なぜ美容師さんは、秘伝のレシピを公開し続けるのか?
美容業界ほど勉強熱心な業界もないと思う。定休の月曜日には全国各地でセミナーが行われ、みんな、休日返上で勉強にこられる。
そこでは、本来であればライバルになるはずの別の美容院が、カットを教えたり、カラーを教えたり、集客術や、スタッフ教育やマネジメントについてレクチャーしたりする。
私もいま、大阪に向かうのぞみの中で、今日は午後からと夕方から2回、美容師さん向けの講演をさせていただきます。こんな勉強会がおそらく、今日だけでも全国で100箇所以上行われていて、どこの会場にも、お金を払って何かを習っている美容師さんがいる。
「秘伝のレシピ」ではないけれど、そこで教えられる技術etcは、長年研究の上に身につけた貴重な技術etcであることも多く、
東京の美容師さんが全国各地の美容師さんに教えていた時期はまだわかるのだけれど、地域ナンバーワン店が、その地域の美容師さんたちに、そのレシピを公開しているなんて(もしくは東京ブレンドのように、トップサロン同士がそのレシピを公開していて)
テレビで言えば、日テレのディレクターのレクチャーをフジ社員がこぞって受けるようなものだし、
出版社で言えば、講談社の新人研修を、宝島の編集長がするようなものだし、
車で言えば、トヨタの開発担当者のノウハウをホンダの人が聞くようなもので。
こんな業界、ほかにあるんだろうか?
少なくても私がもといたテレビ業界はなかったし、雑誌業界でもなかったし、飲食もないと聞く。同じ美容系でも、ネイルやエステも美容業界ほどではないらしい。
と、ここまでかいて思ったけど、そういえば、夫のいる建築業界は比較的レクチャーが多い気がする。
書籍の業界はどうなのかな。私もまだ詳しくないけど、私の本を担当してくださった編集さんのように 本作りの裏側を公開してる方もいるし、雑誌に比べて出版社の垣根を越えた編集さん同士の繋がりも多い気がする。
業界内勉強会(秘伝のレシピの公開しあっこ)が活発になる業界と、それが絶対に行われない業界の違いについて考えるのは面白い。
美容業界に関して言うと、
1)秘伝のレシピといいつつ、お客様の素材は全員違うから、仕上がりにバラツキがあること(つまり、教えたからといって、即、同じ商品を量産できるわけではないこと。結局「秘伝のレシピ」なんていう直裁なものが存在しない業界だということ)
2)ある美容師さんが生涯担当できるお客様には数限りがあること。
3)業界内の蹴落としあいより、業界外との競争が激しいこと。(業界自体を活性化させなきゃいけない理由がある)
とか、かなあ。
よく考えたら、この1)から3)は、建築業界(建築家)も書籍業界(編集者)も当てはまるかもしれない。「秘伝のレシピを伝えることができない」ということは、言い換えれば、人工知能に置き換えられない職業とも言えるかもしれない? どうだろう。
結論のないブログです。
大阪の美容師の皆さん、紀伊国屋書店さま、後ほど、よろしくお願いします!
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