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パイプドビッツ石渡武臣さんの2015年美容業界予測

2015年の美容業界大予測、私の予測貝塚さんの予測柏村さんの予測谷さんの予測に続いて、今日ご登場くださるのは、全国のヘアサロン事情に詳しいパイプドビッツ、石渡武臣さん。 2015 年の流行 予想をしていただきました。

業界大予測.005

★2015年は「自分メディア」元年
 

ずっと「自分メディアが大事」と言い続けてきたし、言われ続けてきましたが、今年やっと、それが実現しそうだと思っています 。集客サイトやポータルに頼らなくても、顧客にメッセージを届けることができる時代になったと感じます。
 

さとゆみ:石さん、よろしくお願いします。2014 年はワードプレスにチェンジしたサロンが多かったですよね。

 

石渡:そうですね。美容室に限りませんが、多くの業界でシフトしてます。飲食店に多いのですが、 ホームページのアドレスを集客サイトリンクにしているお店は今後、厳しくなるなぁ、と思います。 特にブログは既存のブログサイトのアクセス数に対して、疑念がにわかに高まりました。ブログもホームページも、単純PVてだけでサイトの価値を測るというのは、既に意味がなくて、広告代理店の人たちと話していても、既に単純なPV にはあまり興味をもっていないんですよね。

 

さとゆみ:アクセス数じゃなくて、読んでいる人の質が大事ということですか?

 

石渡:その通りです。PV数って気持ちがいいので、PVが多くなるようにしたくなる。しかし、アクセス数よりも、誰に届いたか、もしくは読んだ人がどんなアクションを取ったかが重要なのです。私のコラムも、経営の話やマーケティングの話などは残念ながら正直アクセスが伸びなくて(笑)。アシスタントさんに対する熱い話なんかはアクセス多い(笑)。ただアクセスが欲しいだけで、後者のような記事ばかり書いていてもダメだと思っていて。私たちの届けたいのは、弊社の商品に紐づくべきなので、経営やマーケティング、次の方法論に繋がらないといけないので。

 

さとゆみ:それでいうと、美容師さんって、美容師さん向けの記事を書く人多いと思う。

 

石渡:それはやっぱり、反応がいいからですよね。美容師さんたち同士であれば、「あるある」って共感することも多いし、みんな持論があるから反論もしやすくて、盛り上がりやすい。Facebookで言えば、業界の内部のことを書いたほうが「いいね」の数が増えるし。でも、もし、そのブログがお客さま向けに作ったのであれば、根本的な視点を変えないと、と思います。

 

さとゆみ:「誰に届けたいのか」という視点は大事ですよね。

 

石渡:ウェブ上の情報って、YESかNOの答えが明確なものが多くて。ニーズが回答を求めているのですが、優れた発信者のコンテンツは、「行間」がある。いわゆるコンテキスト(文脈)と呼ばれるものですが、本当に大事なのはこの「行間」を読むことだと思うんです。アーリーアダプターの意見を表面的に読んで、それに左右されて自分の意見がいつも引っ張られてしまうのは、結局、ずっとフォロワーでいないといけなくなる。自分のロジックを作らないと、今後も誰かのフォローをし続けないといけない、と思うんですよね。その対策のひとつとして、今年は、ウェブセミナーだけでなく、「もっと本を読もうよ」という活動をしようと思います。読書はロジックを形成するのに、役立つと思うので。

 

★ネットサービスは最初に食らいつくす!
 

昨年の10月末USENがスタートした『bangs(バングス)』という美容師検索サイトなど、美容関連のサイトやアプリが増えてきたなあと思うし、今年も増えると思います。おすすめなのは様子見 せずに、無料のうちに使い倒すということ。

 

石渡:美容室向けの新しいサービスが立ち上がると「で、他はどこのサロンがやっているんですか?」とみなさん聞かれるらしいんですね。もし他のサロンで既に成功事例が出ていたら、無料サービスは有料化が始まるでしょうし、料金が高くなったりし始める。となると既にそのサイトはレッドオーシャン化が始まるということ。知り合いのサロンで、上手いなぁ、と思うのは、無料提供のうちにどんどんチャレンジして、そのサービスを使い倒しています。もちろん具体的に利益に繋がることも多いですし、何よりも社内に知見が蓄積されるのが大きいですよね。

 

さとゆみ:アフロートさんとか、そうだよね。どこもやってな
いときにどんどん始めていますもんね。

 

石渡:はい。だからこそ、常に最新情報が集まってきます。そして経験が貯まる。ウェブサービスはサイクルが早いから、2年ともたずに無くなっていくものも多いのです。でも、そういうサービスの中で、ヒットしていくものもあるんですよね。ヒットしてから乗っかるのはちょっとリスク。何でも試してみて、自分たちで知見を貯めていくのが大事だと思います。

 

さとゆみ:ちょっと話は変わるけれど、美容関連のアプリやウェブサービスを立ち上げる会社は、最初表参道でテストマーケティングしないほうがいいんじゃないかと思うんですけれど。

 

石渡:まさにその通りだと思います。表参道だけで、というのは危険ですよね。

 

さとゆみ:表参道って、一番その手の情報が多くて辟易してるし、それに取り組むための時間も足りないし。私だったら、地域の一番店と成功事例を作っていくなあと思います。

 

石渡:おっしゃる通りですね。

 

 

★「美歴」アプリ、ついにスタートします

 
「美歴」のアプリ化第1弾が完了して、やっとAppstoreの審査が終わりました(笑)。ですので、春くらいには正式ローンチします。集客サイトやクーポンアプリではなくて、既存顧客の再来を促すことと、顧客分析をするためのサービスになります。今は全国30サロンでモニタリングをしているのですが、今後、拡大していきます。

 

さとゆみ:おおおお。おめでとうございます。既存顧客の再来というのは、私も今年の鍵になると思っています。

 

石渡:飲食業と違い、美容室業界は顧客分析や再来店への導線が際立って重要だと思っているんです。そこをサポートできるといいな、と思うんです。

 

さとゆみ:店販も画期的なシステム搭載されると聞きました。

 

石渡:これは夏ごろにはスタートしたいと思ってます。「美歴」アプリを使ってくれているお客さまに、サロン専売品のECができるようにします。もちろん1対1のクローズタイプのECです。さらに、こちらがリコメンドした化粧品や美容商品をお客さまが購入してくれたら、そのサロンにインセンティブが入るような仕組みを作っていきます。

 

さとゆみ:その収益構造は新しいですね。サロンを離れている時間も顧客との関係性の中で収益が生まれるというのは、「美をプロデュース」する人としての価値があがるということにもつながるわけで。

 

石渡:美容室はもっと美容師さんとお客さまとの間にある「信頼」をベースにした商売をしていくといいと思うんですよね。

 

 

★サロンの利点をもっと生かしたビジネスを

先ほどの話につながるのですが、美容室が持っている信頼という利点をビジネスにしていくという動きは今後加速すると思います。例えば、車や家を販売したり、保険を斡旋したりというサロンも出てきました。美容室は「髪を切ってお金をもらう場所」だけではない役割を持ち始めています。
 

さとゆみ:車を売るサロンさんの話、聞きました。

 

石渡:茨城県水戸市を中心に展開されているape(アーペ)さんというサロンです。ネッツトヨタ茨城とコラボレーションして、アーペオリジナルのエンブレムがついた車を販売しました。250台限定で半年間という期間限定販売でした。相当数が販売されたと聞いています。また家も新築からリフォームまで取り扱っているんです。これもお客さまには好評だそうです。経営者の鈴木さんのお話を聞いたとき、「美容室って、逃げられないんです」という言葉が印象的でした。例えば、一般の自動車ディーラーで車を購入した後、その担当者が転勤したり、ディーラー自体が潰れたりすることがある。つまり購入時の担当者がいなくなることがあるけれど、美容室は、地域に根ざしているから逃げられない。「その後、どうですか?」みたいな簡単なフォローも含めて、ちゃんとお付き合いしていく、という覚悟というか、信頼が購買につながっているんじゃないかって。

 

さとゆみ:これは本当に新しい考え方ですよね。

 

石渡:これまで美容師さんって、お客さまと向かい合って商売をしていたと思うんです。もちろん、それは大事なのです、施術をする美容師としては。ただ今後は、お客さまの隣に立って、同じ方向を向いて、美容師さんたちが良いと思うものを、自信を持っておすすめしていくコンサルタントのような存在になっていくのがいいのではないでしょうか。これは、何でもかんでも売ればいいという意味ではなくて、ひとりひとりのお客さまの価値をカスタマイズできるか、ということです。そしてどのビジネスも、社会に対してどう貢献しているのか、という本質が問われる時代になってきているからこそのシフトチェンジだと思うんです。

 

★M&A が進む

今まで美容業界って、「分散」の歴史だったわけです。でも今後は、「統合」が進み財務状況を安定化していかないとちょっと難しい時代になっていきます。なので、M&A(もしくは業務提携)が進むのではないかと思います。同時に、美容師業ではない社員がしっかりしているサロンが伸びていく、とも思います。美容業界に美容師じゃない人の視点を入れることができるサロンが、今後の競争に残っていくのではないでしょうか。

 

石渡:美容は技術業だから、今までM&Aは馴染まないって言われていたんですよね。だから技術やブランドのギャップが埋められるFCが増えたのだと思うのです。しかし、今後はFC制度って、相当に厳しくなるんじゃないかって気がしてならないんです。

 

さとゆみ:それは、FCと本体の関係性のこと?

 

石渡:それも大きな要因です。今、FCに格差が生まれているそうで。本部よりもOBオーナーのほうが強い状況になりつつありますよね。売り上げ面でも経営施策面でもFCが本体を引っ張っているところもある。本体が相当に経営的に強い、戦略があるなどの強みがないと、FCでいるメリットって減ってくると思うんです。またその一方で、新しく色々な取り組みをしようとしたら、一度、財務状況を安定させる必要があります。そうなると中小規模の美容室の場合、M&Aや業務提携というのは、ひとつの施策になると思うんです。

 

さとゆみ:なるほど。

 

石渡:野球の話になるんですが、2007年に設立されたパシフィックリーグマーケティング株式会社って知ってます? この会社は、パ・リーグ全6球団で、お金と知識を持ち寄って、イベント実施やチケット販売、スポンサー獲得合同で行っている会社なんです。この考え方はとても合理的でコストダウンだけでなく、経験とインフラの共有ができる。メリットが大きいわけです。この場合、マネジメントは業界外の人が良いと思うんですよね。例えば、東京ブレンドさんみたいなブランド力のある会社が集まっているのであれば、さらに企業化を進めていく。そしてその会社をLINEの田端さんみたいな人にマネジメントしてもらったら、どんな面白いことが起こるんだろうってワクワクします。

 

さとゆみ:わ、それ、すっごく盛り上がる!

 

石渡:美容室業界は、業界に染まっていない人の感覚が、上手に持ち込まれ、有機的に癒合した時に、ブレイクスルーすると思うんですよね。その実力と下地、何より国民のなかに文化があるわけです。それを今年は期待しています。

 

石渡さん、ありがとうございました。

 

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