リクルートライフスタイル 柏村美生さんの2015年美容業界大予測
2015年の美容業界大予測、私の予測、貝塚さんの予測に続いて、今日ご登場くださるのは、柏村さん。
ホットペッパービューティを運営するリクルートライフスタイルの執行役員。2014年末からはビューティ総研センター長も兼任。2015年のみならず、また美容業界のみならず、今後の産業の大きな流れについても予測してくださいました。
★美容も「パーソナルケア」と「体験」の時代に
2014年は、個人の時間を売買する「time ticket」や、医者の問診が受けられる「doctors me」などが話題になりましたが、このパーソナルケアという考え方はビューティ&ヘルスまで広がるのではないかと思っています。
柏村:時間価値への意識、時間を消費することに対する意識が、昨年いろんなサービスが出たことで如実に変わったように思います。
さとゆみ:私もone to oneという書き方をしましたが、個人と個人の間での取引は、今年の一大キーワードになりそうですね。
柏村:鍵は「私らしさの承認」にあると思います。若者などでは青文字、赤文字などにくくられない「新しい中間層」が増えています。パーソナルに寄り添ったサービスは重要視されていくと感じます。もうひとつ、「体験」もキーになりそうだと思っています。例えば、旅先において個人宅で食事ができる「kitchhaike」など、体験型の通販も当たり前になってきている。美容にもこの流れは広がると考えています。
★メンズの「サバ美ーマン」にスポット
リクルートのトレンド予測でも発表した、30代半ばから40代の「新・身だしなみ時代を生き抜く《サバ美ーマン》」に注目しています。バブル世代のようなモテたいというギラギラした美容意識ではなく、周囲に不快感を与えたくないための「美活」が特徴です。
柏村:職場に女性が増え、また下からは草食男子とも言われる「綺麗男世代」が続々入社してきているのが「サバ美ーマン」世代です。美活による「サバイバル」が必要な世代という意味も掛け合わせました。
さとゆみ:周囲に嫌われないために身だしなみを整える必要がある世代というわけですね。
柏村:ホットペッパービューティのサイトでも、今年はメンズ向けのコンテンツ強化をはかっていく予定です。
★イベント増加と「きっかけ消費」
ハーフバースデーや、ハーフ成人式、ハロウィンなど、新しいイベントが日本に増えてきています。それに伴いイベントをきっかけにして消費をする「きっかけ消費」も増えています。ヘアサロンでもイベント消費を意識していくことが大事になってきそう。
柏村:昔はなかったイベントが増えているんですよね。
さとゆみ:ハーフバースデーは最近よく聞きますね。父母だけではなく、祖父母も参加していくから消費も増える。
柏村:SNSの影響もあるのでしょうが、日常を全てイベント化するという意識を感じます。
さとゆみ:「写真映えすることが大事」という視点もここ数年のものですよね。見た目を整える行為に直結するので、美容の消費とも相性がいいと思います。
柏村:ただし、そうなってくると「日常」って一体何? という疑問にあたります。一方で日常の大切さを意識する必要もあるわけで、美容業界ではその両輪をまわすことが大切になってくると思います。
★スーパーシニアと親子三世代消費
日本の社会は発展型から成熟型に移行しています。以前はシニアと呼ばれていた60代のファッションや美容への意識は昭和の時代とは全く違います。「親と子に嬉しい&優しい」だけではなく、「親子とその親にとっても嬉しい&優しい」サービスが今後求められるでしょう。
柏村:よく、アニメのサザエさんのふねさんと、松田聖子さんが同い年(52歳)だというような話がセミナーで話されたりしますが、50代、60代の感覚は昭和時代と全く違います。
さとゆみ:大人女性と言われる40代も、10年前とは意識が全然違いますよね。
柏村:メンズ同様、今年はホットペッパービューティでF2層(35歳〜49歳の女性)に向けた発信を強くしていく予定です。この世代を中心にした、親子三世代消費の拡大にも寄与できればと思っています。
さとゆみ:いよいよ! ですね。楽しみにしています。
★サロン3店舗づかいの増加
ホットペッパービューティを見ていて、昨年新しい動きと感じたのが、気分によってサロンを使い分ける「3店舗づかい女子」の出現。まだ理由までは追いきれていませんが、複数のサロンを行き分ける顧客の動向に注目しています。
さとゆみ:これはメニューごとに使い分けているというわけじゃないんですよね? カットはここ、カラーはここ、というふうに。
柏村:どうやらそうではないんですよね。おしゃべりしたい日はここ、ゆっくりしたい日はここ、というような使い分けが増えているようなんです。
さとゆみ:それはとても興味深いです。私も、デザインマッチングではなく、コミュニケーションマッチングでサロンを選ぶ人が増えているように思っています。
柏村:この複数サロンづかいの傾向は今後も調査していきたいと思っています。
★エシカル消費はまだまだ増える
エシカル(倫理的に正しいという意味)ファッションや、エシカルフードだけではなく、ついにエシカルバングも登場しました。社会にとって良いことをしている会社に投資するというコンセプトの銀行の登場です。このような「社会にとって良いことをする」という社会貢献の考え方は、今後ますます増えていきそうです。
柏村:NPOってこの10年で5倍に増えているんですよね。社会のために働きたいという考え方は既に若者を中心に珍しいものではなくなっています。
さとゆみ:エシカル消費も、ここにきて一歩踏み込んだものになってきているんですね。
柏村:今後企業のサービスや商品はより、社会的な価値を問われるようになると考えられます。訪問美容や福祉理美容も広がっていくでしょう。
★インバウンドはハラル対策が鍵
海外との関係では、特にイスラム対応に興味を持っています。世界人口の4分の1はイスラム教徒ですので、日本も(そして日本の美容業界も)いよいよハラル対応に目を向ける時代になるでしょう。 さとゆみ:オリンピックもありますしね。
柏村:今、東京でハラル対応できるお店はほとんどないですよね。オリンピックまでの課題になると思います。まず知ることが大切だと思っています。知識を持ってイスラム教徒の方々に配慮ができるというだけでも全然違うと思います。今年は個人的にも宗教の勉強をし直ししようと思っています。
さとゆみ:インバウンドで言うとどの国に注目していますか。
柏村:美容に関して言うと、ベトナムとインドネシアです。平均年齢が若いですし、美容需要が今後ますます伸びる国ですね。
★女性活躍で女性の価値観があらゆる場に
「2020年までに女性管理職の割合を30% 以上にする」という政府の目標設定のためだけではなく、あらゆる場で女性の活躍が広がっています。日本の産業が製造業からサービス業に移行していく過程で、極端に言えば人と人がやりとりする職業には全て女性の価値観が重要視される社会になると思います。
さとゆみ:リクルートさんが2014年末に発表されたトレンドキーワードも「部ランチ」(歓送迎会などの開催時間が夜ではなく昼間に変わってきている)や、「ママ喜業」(ママ向けサービスの小規模な開業)などが話題になりましたね。
柏村:ビジネスパーソンとして女性が企業で活躍することで、女性の価値観が企業の文化に変化を与えたり、商品やサービスに反映されたりすると思います。
さとゆみ:この流れは美容業界にも影響しそうですね。
柏村:女性の価値観を本質的に理解して大切にしていくということは、一過性のものではなく、今後のサービス業の要になっていくと考えています。
柏村さん、ありがとうございました!
【関連記事】