ケイアートファクトリー谷さんの2015年美容業界予測
2015年の美容業界大予測、私の予測、貝塚さんの予測、柏村さんの予測、に続いて、今日ご登場くださるのは、谷さん
ヘアサロンに特化したDMやパンフレット、リーフレット、近年ではホームページの製作などを手がけるケイアートファクトリー代表の谷和雄さん。昨年私が聞いたセミナーで、一番面白くためになったのは谷さんのセミナーでした。そんな谷さんに2015年の業界予想をしてもらいました。
★集客サイト費用から離脱するサロンが出てくる
今年よく聞いたのは、「なんとか集客サイトのランクを落として、自分たちで新規をとれるようにしたい」という話。集客サイトをやめるというまではいかないものの、ブログや自社サイトに力を入れるサロンは増えてきています。2015年はこの動きが加速すると読んでいます。
さとゆみ:オウンドメディアを重要視したり、集客サイト以外の予約システムを使用したりという傾向が、昨年、有名店を中心に強くなりましたよね。
谷:2014年は美容の技術売上でいうとほとんどのサロンが前年を割っています。その中でやはり広告費の負担が大きい、少しでも減らしたいというサロンが多かったように思いますね。
さとゆみ:顧客情報をどちらが持つかという話も話題になりました。
谷:そうですね、集客サイトでネット予約をすると、顧客の情報は全部集客サイト側に流れますから。メールアドレス含め、顧客情報を集客サイト側が持つことになるんですよね。そのメールアドレスに、自分たちのThank youメールだけではなく、集客サイト側からもどんどんメールが届いて別のサロンへの誘導されていることに気づいたサロンは、できるだけ早く離脱したいと思っていますね。
さとゆみ:私も前にブログで書いたんですが、自分たちも実際に、集客サイトの予約システムを使って予約してみたほうがいいですね。
★ファミレスサロンから専門性のあるサロンへ
ファミレスのように「何でもやります」というお店が増えてきているように感じます。顧客の要望も高くなっているこの時代、専門性の高いサロン作りが重要になってきます。
谷:お客さまはナポリタンを食べたい時に、わざわざファミレス行かずにイタリアンに行くだろうし、ラーメン食べたいときにもファミレスには行かずラーメン屋に行くだろうってことですよね。トータルビューティが悪いとは言わないけれど、もう少し自分たちのお店の特徴をしっかり打ち出していくことがより重要になるはず。
さとゆみ:その考え方でいくと、小規模サロンでも勝ち残れる見込みがありますよね。
谷:その通りですね。専門店の作り方は異業種に学べるところは大いにあると思います。例えば、北海道の函館市に15店舗ある「ラッキーピエロ」というハンバーガー屋の話が面白かったです。地元の人に圧倒的に人気のあるハンバーガー屋です。横展開はしておらず地産地消がモットー。函館では、マックもモスもロッテリアも勝てないらしいですね。こういう強いブランドを作っていくのが大事だと思うんです。
さとゆみ:そのご意見には賛成です。ただ「顧客化」という面に関して言うと、私、必ずしも飲食と美容は同じ土俵で語れないと思うんです。というのも2つ理由があって、1つは顧客の来店回数の違いですね。日本人の平均外食回数は1年に約200回と言われています。1年に200回も選ばれるチャンスがあるんです。それに引きかえ美容は3〜4回/年のチャンスしかありません。たった年に数回の来店ですから「選ばれるか、選ばれないか」がよりシビアだと感じます。もう1つ、飲食には「浮気」という感覚がないですよね。日によって店を変えるのが当たり前なので。けれども美容は一度違う店にいくと、戻ってくることが飲食以上に難しい業界だと感じます。1年のうち全て自分の店にきてほしいというのが美容業が飲食と違うところだと思うんです。
谷:つまり、「囲い込み」が必要な業種だということですよね。
さとゆみ:そう感じます。
谷:その「囲い込み」に関して、次、お話したいと思います。
★「スタイリスト」ではなく「サロン」に顧客をつけることが重要になる
新規を顧客化するのに今後より大事になっていくと感じるのが「スタイリストを自由に指名できる」ということ。10人スタイリストいたら10人全員試せるくらいでもいい。そういう仕組みのあるところが、顧客を固定化しやすくなる。
さとゆみ:これ、ズバリですね。
谷:こういう話をするとどのオーナーさんも「いや、谷さん、うちは選べますから」って言うんですけれど、「え? じゃあ、Aさんが担当したお客さまに帰り際Bさん、Cさんのことを紹介してお返ししているんですか?」と聞くと「それはしていない」と言うんですよね。お客さまにしてみれば、それは「選べない」と同じですよね。
さとゆみ:積極的にいろんなスタイリストさんを経験してもらうように取り組んでいるサロンさんでは、お客さまはどんな感じですか?
谷:7〜8割は2度めに違う人を指名しますね。
さとゆみ:推奨したらそうなるってことは、本当はお客さまもそうしたかったってことですよね。
谷:新規の再来率はどんどん低くなってきていますから、新規の再来をあげるためにも「もう一度、ほかのスタッフも試してみてください」というのは重要だと思いますね。
★休眠美容師が働きやすい環境づくりを
新卒の子は今後、人数的に増えない。であれば、40歳前後で一度美容師を離れた女性美容師が戻ってきやすい環境を作ることが重要になってくると考えられます。
谷:いま、JBCAでも美容師再生プロジェクトというのをやっているのですが、これはもう2015年の一大トレンドというか、どのサロンも取り組み始めることになるでしょうね。
さとゆみ:リクルートは、いま美容業界で最も関心の高い項目になっていますよね。
谷:リクルートというと、最近の学生は特に、ものすごく情報収集をしていますね。サロンに勤めている先輩に連絡をとって情報収集しているケースもあるし、実際に客としてサロンに行っているケースもあるし。そうなるともう透明なんですよね。どれだけサロンがお金出してパンフレットに良いこと書いても、その先輩たちから「うちのサロンは全然よくないよ」と言われたら、もうその噂がぱーっと広まって一発です。
さとゆみ:そのあたりを、サロンも考えていかなくてはいけないでしょうね。
谷:学生にとっても休眠美容師にとっても「働きやすい職場」が就職決断の決め手になるし、結果的に「働きやすい職場」だと人も残るし……という循環が決定的になっていくでしょうね。
★動画での流入が増える
スタッフの人柄やサロンの内装など、動画だからこそ伝わりやすいコンテンツは今後動画になっていくと思います。
谷:動画はずっとくるくると言われてきていましたが、2015年は本当にくると思います。
さとゆみ:私も今年は動画コンテンツに力を入れようと思ってます。
谷:アクセス流入的にも、動画は狙い目だと考えています。
★エビデンスでイニシアチブを
とくにヘアケアの分野では、ダメージ具合を感覚的にではなく、数値化して提示し、エビデンス(根拠)のある処方をしていくことが増えると思います。プロとしての対応が、美容師業の価値をあげ、収益増加にもつながると考えます。
谷:2014年の売り上げを見ると、ヘア技術単体では軒並み下がっていて、店販やアイラッシュなどの増加分が赤字を補填しているという形になっています。この収益構造を変えるためにも、ヘアケア分野を中心としたメニュー提案は重要になってくるでしょう。
さとゆみ:イニシアチブをとれるということはひとつのキーワードになりそうですね。
谷:毛髪や頭皮状態の見える化というのも、重要になってきそうです。
谷さん、ありがとうございましたーー!
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