2017.08.20 Sun

19歳のときにかけられた、呪い、もしくは、救い。

大学時代、児童相談所にくる小学生や中学生の話し相手になるバイトをしたことがあります。
東京都が定める講義を聞いて、採用試験を受けても依頼されるまでにいくつもハードルのあるバイトで、私以外の大学生は、ほぼ全員、心理学科の学生さんだった。
私は墨田区の児童相談所に通っていたんだけれど、私の大学時代は、地下鉄サリン事件があった頃で、児童相談所には信者のお子さんが何人もいたように記憶しています。

児童相談所で子どもたちに接するときは、専門のカウンセラーさんの指導の元で、接していました。大抵は、精神科医や心療内科医を引退した先生が多かった。
で、私、その児童相談所で、ある元精神科医のおじいちゃん先生に、とても熱心にスカウトされたんですよね。
「今からでも遅くないから、国文科をやめて医学部か心理学部に入り直して、精神科医かカウンセラーになったほうがいい」って。

 

その先生は、こんなことを言っていました。

 

「ほとんどの人間は、心に小さな風船を抱えて生きているんです。だいたいの人は、その風船を一生つつかれないまま死んでいくので、心を病むことはないんだけれど、ときどき、その風船に触れられてしまった人は、心の病気になっていくんですよね。
でもごくごくまれに、風船を持たないまま、大人になる人がいるんです。あなたは、私が今までに数人しか出会ったことのない、そのタイプです。どこをどうつつかれても、一生心を病まない人なんです。
これって、オリンピック選手やプロの音楽家と同じように、特殊な才能なんですよ。今からでもいいので、心の病を扱う仕事につきませんか?」

そのときは、ふーん、そんなものなのかなあ。なんだか占いみたいな話だなあと思ったし、まあ普通に国文科を卒業してテレビの仕事に就いたんだけれど、その時、その先生に言われた言葉が、40歳を超える今でも、私の人生に影響を与えていることに、最近気づいた、んですよね。

 

「私は、ぜったいに病まないタイプらしい」と、潜在意識の中で、信じ続けていたなあ、と。

 

今年の下半期は、「心」や「病気」や「生死」を扱う書籍ばかり、担当しています。

 

 

死を扱う書籍のときは、納品するまでに、大切な人を失う瞬間を何度も何度も体験して、その都度泣いて落ちて、夢にまで見て、を繰り返します。

 

そういえば、鈴木三枝子さんの『道を継ぐ』を書いたときも、編集さんと構成の話をする以外、誰とも会話ができない日が何日も続いたりしました。

 

こういう書き方が正統派なのか、どうなのか、わからない。他の人はどうやって書いてるのかも知らない(今度聞いてみよう)。
でも、自分は今のところこういう書き方しかできないし、こういう書き方をしているときに心の支えになっているのは「君は一生心を病まないタイプ」というおじいちゃん先生の言葉だったり、する。ってことを、今日、ふと思い出しました。
救いのようでもあるし、呪いのようでもある。

 

そんなおじいちゃん先生の言葉を、一度書いておこうと思いました。

 

 

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カテゴリ:Thinking

2017.05.07 Sun

いつかモブキャラを脱出できるのか さもなくば死

先日、NHKのEテレさんに出演させていただいて、女子高生の髪の悩みを聞いていたら「私、モブキャラを脱出したいんです」と、切実に訴えてきた女の子がいた。

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モブキャラをご存知ない人に、解説

モブキャラクターは原則として名前を持たず、「群衆」として扱われる。 漫画やアニメの中で、名前が明かされるキャラクターの背景に描かれる、偶然そこに居合わせた通行人達などが、モブキャラクターの典型的な例である。 モブキャラクターを英語風に表記すると、“mob character”になる。 略してモブキャラともいう
(wikipediaより)

 

 

彼女が私の目をまっすぐ見て伝えてくれたことに、私はちょっとじーんとして、なんだか収録中なのに、泣きそうな気持ちになった。

 

あの泣きそうだなと思った感情はどこからきていたのかなと、その日からずっと考えていたんだけれど、そう。そうだ、彼女はまだ、何者にでもなれるんだなあと思ったからだと思う。そのまじりけのない可能性に、まぶしいような羨ましいような、揺さぶられた気持ちになったんだよなあ。

 

彼女が言った「モブキャラを脱出したい」という言葉。

 

言葉を変えて言うのであれば、それは

自分は他の誰とも違う「何者か」に、なりたい

ということ。

 

うん、わかる。すっげー、わかる。

 

太宰が悩んだことだってそれだし(だから死んだ)、バスキアが探し求めたのもそれだし(だから死んだ)、周防先輩が選んだ道もそれゆえだし(参照「ちはやふる」)。

 

そして、自分が何者かになれるかどうか問題に関して考えることの苦しさは、歳を重ねるごとにその質が変わってくるようにおもう。

 

 

10代や20代のときの苦しさが

自分が選ぶべき道はどこにあるのか。この選択肢で本当に間違っていないのか、別の道を選べばもっと違う人生が開けているのではないかと想像する苦しさだとしたら

 

 

30代の苦しさというのは、

自分が選んだ道は本当に正しかったのか。才能はあったのか、なかったのかがわかってしまう苦しさだとして

 

40代の苦しさというのは

自分は何者でもなかったと知った上で、なおもこの道であがくのか、それともおりるのか。あがくと決めたとして、これから先、若い才能に囲まれていつまで戦えるのか。残された時間はどれくらいあるのか。掛け値なしで向き合う苦しさのような気がする。

 

 

昔、某新聞社の偉い方と呑んだとき、「40代になったら楽だよー。自分が何者でもないってわかるから、あらゆることが諦められる。ゆみちゃんも早く40代になるといいよー」と言われたことがありましたが、おじさん、冗談言っちゃいかんですよ。そんなに、突然、物分かりよくならないっすよ。私、欲しがりなんすよ。

 

もう大人なんだから、誰に強要されているわけでもない。自分で選んでいる道です。

足掻くと決めたら、でもも、だっても、だけどもない。

本当は私、そんなこと望んでいたわけじゃないんだけれど、とこっそり目標修正するのも無し。そんなに簡単に自分は騙せない。

 

 

2013年に、私はこんなブログを書いていて

「僕たちはこの東京砂漠でヒットを重ねるのかホームランを狙うのか」

 

 

あのときは近い未来の想像でしかなかった、40代に、リアルに切実に直面している。

想像以上に、次の壁は、高い。

あと、想像していた以上に、体にガタがくるね、うん。

 

 

と、まあ、そんなことを考えたり考えなかったりしながら書いて生きています。

 

 

 

ちなみに、モブキャラを脱出したいんですと言った女子高生は、毛利ちゃんに前髪をショートバングにしてもらって、特別な女の子になっていました。キラキラしてた。

ちょっといろんなことを考えさせてもらったので、彼女には、感謝しています。

 

 

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2017.01.03 Tue

最近NYで女性のボウズとベリーショートが流行っている理由

assortにNYからMASAMIさんが帰ってきていると聞いて、髪始め、してきました。

 

 

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MASAMIさんにお会いするのは1年半ぶり。 前にお会いしたときはassort NYで働いてらっしゃいましたが、いまはassortがNYにオープンした2店舗めのVACANCY PROJECT NYで働きながら、いろんなアーティストの人たちとヘアメイクでコラボしている方。

 

で、最近のNYはどう? なんて話をしていたら、「ボウズにしたり、ベリーショートにしたり、極端なウルフにする女性が増えましたね」とのこと。

 

その理由のひとつは、70年代、80年代のファッションが流行っていること、それはもちろんあるんだけれど、でもそれだけではなくて、彼女たちの髪型は政治的な意思表明なんだとか。というのも、あきらかに、大統領選挙のあと、ボウズやベリーショートやウルフにする女性が増えたんだそう。

 

女性が女性らしい格好をもとめられることに対してNOと宣言する意味あいのボーイズライクな髪型。つまり、女性蔑視の発言が続いたトランプのサポーターではないことの意思表示として、あえて女性らしさを排除した髪型をセレクトする人が増えた、と。

 

ヒラリーとの接戦が報じられていた時期は、パンツスーツを着る女性も多かったそうで。伝統的な「お仕着せのフェミニン」「女性は三歩下がって家に入っていなさい」に対抗する表現として、ファッションやヘアスタイルで意志を表示したわけですね。

 

そこにkenさんが会話に加わってきて「アメリカでは自己主張の強い人が多い印象があると思うけれども、とくにNYでは『主張をしない』というのが一番評価されないから、そうやって自分の意思表示を見える化する」と教えてくれた。

 

これ、日本にはない感覚。

 

「今年、NYの女性は、『髪型は自分にとって何を表現するものなのだろう』という問いに直面した」と言ってらして、大変興味深いお話でした。

 

 

髪は、私にとってもやはり自分自身の今の気持ちをメッセージするための一番大切な表現方法で、年があけた瞬間、「金髪にしたい」って思った。多分、去年の自分に飽きたんだと思う(笑)。

 

 

MASAMIさんといろいろ相談して、金髪にこそしなかったのだけど、アッシュを入れ直しして、ところどころ暗めの太いメッシュを入れてもらってきました。

 

今年は地に足をつけない。跳べるだけ、跳ぶ。ハネれる場所では全部ハネる。迷ったらコンサバティブじゃない方を選ぶ。そんな決意表明のカラーリング。

 

 

みなさま、今年もよろしくお願いします。

 

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『女の運命は髪で変わる』の続編について


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2015.09.05 Sat

あるものでなんとかするチカラ

このあいだのセミナーで、ちらっとお話ししたら、ずいぶん感想をたくさんいただいたことを。

 

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天才じゃない限り、自分の持っている才能やセンスに満足してる人っていないと思うんだ。

 

でも、

 

 

われら凡人はいろいろ足りないかもしれないけど、あるものでなんとかするチカラさえあれば、結構しあわせに生きていけたりするかもしれないって思う。

 

 

私は結構それが得意で

 

ひとつひとつの能力は低いんだけど、それを組み合わせて逃げ切るのがわりにうまいなあと自分でも思う。

 

 

これしかない、と思うのではなくて、少なくてもこれだけはある、からして、あるものでなんとかしよう、というか。

 

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一回目の結婚の時はお金がなさすぎて、新婚旅行の費用はパチンコで稼いだお金で出した。
朝から並んだ台がバカあたりして、2人で11万円稼いだから、そのままそのお金を握りしめてHIS行って、これで行ける海外、どこでもいいですって窓口のおねーさんに相談したんだよなあ。

グアムの2泊3日はそれはそれは楽しかった。

 

 

あのころに比べたら仕事もたくさんいただけるようになったけれど

 

 

でも、結局のところ、出自は変わらないというか、

仕事がなければないで、多分楽しめるだろうなって自信だけはある

 

 

だいたい、頑張れば頑張るほど、全くかなわないようなすごい人たちに出会うから、年々、自分のたりない部分がどんどん目立つようになる。

 

努力してなんとかなるものならまあまだマシで、だんだん、努力とかじゃない、そもそも備わってない人には備わってない能力に気づいて落ち込んだりする。

 

 

あ、いや、うそ。

もう、あんまし落ち込んだりしない。

 

なんでかっていうと、

 

 

そんな状況でも、そのときあるものの組み合わせで、なんとかなるべ、多分。って思うようになったから。
自分に備わってないものは、嘆いても、しゃーない。それよりは、ちょびっとでも備わってるものを有効活用しようって。

 

 

で、まあ、だいたいなんとかなるよね。

 

 

 

 

最近気づいたのは

「あるもの」を足し算するんじゃなくて、かけ算することがコツかもなあと思っていて

 

 

具体的に言うと

 

自分一人でやると「あるもの」は足し算にしかならないんだけど、

 

人と一緒に仕事をすると、自分がもってる、なけなしの「あるもの」も「かけ算」になる気がする。

 

 

 

もう、年齢も年齢なので、切磋琢磨して伸びる部分は切磋琢磨し

ムリめなところは、いさぎよく手離し

 

 

そして、自分にあるちょっぴりのものだけでも、いろいろ組み合わせて、人とも組み合わさったりして、なんとかするチカラを図々しく図太く育てていこう

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2015.09.03 Thu

いい人だから売れるのか 売れるからいい人になるのか

この間、あるファッション関係の対談取材を終えたあとに、お夕飯をご一緒させていただいたいのですが、その場でこんな話が出ました。

 

「本当に売れている人は、お客様のためだと思ったら、他のスタッフを推薦したり、他の店を推薦したりする」

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確かに、売れている人ほど、自分を売り込むのではなく「後輩の●●をぜひ、よろしくお願いします」って言ったりするし、「●●サロンの●●さんのクリエイティブを尊敬している」と言ったりされるなあって思う。

 

とくに美容師さんに関して言うと、売り上げがすごかったり、全国を飛び回って講習したり、雑誌に出まくっているような売れっ子さんは、ほとんどの方が素晴らしい人格者です。

 

そもそも人格者じゃないと、結局サロンワークでお客様に支持されていないわけで、売り上げもあがっていないわけで。

 

とくに対面接客の美容師さんの場合、「いい人じゃないと売れない」という側面はやっぱりあると思います。

 

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ただ、一方で、売り上げがあがったり、売れっ子になったりするからこそ、いい人になる、ともいえます。

 

それにはこんな理由があって

 

1)まず、生活に困らなくなると、ホントに「お客様のため」や「デザインのため」にピュアになれる

 

2)自分のステージがあがって、それまで会えなかった上の人たちと会うようになると、「自分ってまだまだだ」と謙虚になれる

 

3)自分のファンが増えると、その人達を絶対に裏切りたくないと思って、より切磋琢磨するようになる

 

という、好循環のスパイラルに入るような気がするんですよね。

 

 

昔、本当に才能があるし、素晴らしいクリエイティブをされる若手の美容師さんの先輩に

 

 

「あの子、ダントツでいい作品を作るので雑誌の編集さんには評判いいんですが、本当にわがままで、スタッフにも信頼されないし、お客様もなかなかつかないんです」

と、相談されたことあります。

 

 

で、そのとき私がその先輩にアドバイスしたのが

 

「だったら、なおさら、いろんな雑誌の撮影に出まくらせるといいですよ」ってこと。

 

 

なぜなら、雑誌の撮影に出まくったら、

 

 

1)同じスタジオで巨匠の作品づくりを目の当たりにするはずだから絶対に謙虚になるし、

 

 

2)撮影で成果を出さなきゃいけないと思ったらアシスタントさんやモデルかかりさんに好かれないとやってけないし

 

 

3)雑誌に掲載された写真を見て指名してくださったお客様には、本当に心から感謝するはずだから、お客様にも支持されるようになるはずって。

 

 

その後、雑誌に出まくり続けたその方は、売り上げもあがり、スタッフさんからの信頼も高くなり、いまではサロンになくてはならない存在になっています。

 

 

いい人だから売れるもあるけど

売れるから、いい人になるというのもあるなあ、と。

 

そんなことを考えました。

 

 

 

先日インタビューさせていただいた画家の方が

「絵を描いて食っていこうと思うからダメなんだよ。お腹いっぱい食ってから絵を描かないと」

と、おっしゃっていたのも、これにつながるところ、ある気がします。

 

 

 

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